ルター等の宗教改革が及ぼした影響

「ヨーロッパ近代史」 君塚直隆著 ちくま新書

第二章宗教改革の衝撃を読んだ感想

※読書日記としてざっと書いたため正確ではない記述がありそうです。それでも良ければお読みください。

ルターはキリスト教会のシステム(教会、公議会)の腐敗を指摘した。95カ条の提題。このアンチテーゼとして教皇は「破門」するぞと脅迫したが、ルター派の働きは全国的に広がり、ついに破門したが、ルター派ザクセン公に守られた。

ルター(教義の内容)⇔教皇(権力への不服従

の対抗勢力が見えるのに対して

ルターは教義を一般化させようと印刷技術を駆使してドイツ語として聖書を普及させた。教会の独占状態を開放させ一般化させた。万人祭司説の考え方の副作用で、権力の分散という考え方につながった。これによって、現状に不満を持った勢力がルターの真の目的とはずれたところで行動した。たとえば、1/10の作物を税金として納めることに反発した農民や役職を増やしたい騎士の反乱など。輩(やから)などが便乗することをわかっていながら神は全体の動きを許容したのか、教会システム腐敗を是正するために。

風が吹けば桶屋が儲かる」理論が成立している。ルターの教義の内容に対する抗議から派生して、教皇側は権力への不服従と認識した。ここには論題に対する齟齬が見られる。そして教皇側の不服従に呼応するかのように、各人が集団を形成して不服従思想に共鳴して反乱を起こすようになった。混乱の状況下、ルターvs教皇vsその周辺人の不満の教義・権力問題とは全く無関係であるわたくしごとの理由(離婚など)で隙きを見てそそくさと行動したイングランドの国教会などがあった。ほかにもオスマン帝国とフランソワの同盟関係など、ひとつの出来事が波紋のように次から次へと新しい連鎖を生み出した。「バタフライ効果」もみられる。主命題からずれた別命題が影響力をもつようになって世界に作用したことがわかった。

 

改訂 2022/9/13

1517年の95カ条の提題から始まった一連の事態は、1555年のアウクスブルク宗教平和令によってひとまずは収束した。現在では「宗教改革」と言われるこの出来事は、ヨーロッパに何をもたらしたのだろうか。それは、主体性ではないだろうか。一般民衆はラテン語の素養がないため、聖書の内容を祭司を通してのみ知り得た。しかし、聖書を直接読めることになったおかげで、神と自分自身の関係性ができた。

諸侯はカトリックプロテスタントのどちらかを自分に選べ、家臣は自分の信仰宗派へ移住する権利が付与された。キリスト教が絶対的にひとつだった時代が終えたのは大きな意味を持つ。やがて、キリスト教以外にも、さまざまな選択肢が現れ相対化されるに至る先駆けとして捉えられる。